紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク | 紀伊・環境保全&持続性研究所 連絡先:kiikankyo@zc.ztv.ne.jp |
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化学合成農薬や化学肥料を使用せずに栽培した有機農産物に対する消費者のニーズが高まっている。一方、かつて有機質肥料を使用しただけで有機農産物と表示するなど、生産・流通段階で不適切な表示があり、また、流通・加工段階で有機的な取り扱いがなされたかどうか不明確であることなどから、消費者の間で混乱が生じていた。こうしたことから、有機農産物等について適切な表示がなされるように制度的改善が図られた。
平成11年(1999年)に「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)が改正され、平成13年(2001年)4月から有機食品の検査認証制度がスタートした。これにより法律に基づいて「有機農産物」や「有機農産物加工食品」の表示が行われることになった。「有機農産物」は、第三者の認定機関(登録認定機関又は登録外国認定機関という)が圃場ごとに有機農産物生産者を認定し、その生産者の生産物に限って「特定JAS有機マーク」(上記のマーク)を貼付することが許されることになった。逆に、生産者が認定を受けずにこのマークを貼付したり、「有機」や「オーガニック」等の表示を商品に付けることが禁止され、使用違反の場合には罰則が課せられることになった。ただし、新聞、雑誌、ちらし、インターネットなどの媒体で有機農産物を取り扱っていることの情報提供をすることについては例外扱いにされている。
今回のJAS法改正による「有機農産物」表示には、海外のFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)による「オーガニック農産物」の表示のあり方の検討結果が反映されており、国際的な整合性を重視した内容になっている。このため、登録外国認定機関の認定した海外の生産者の生産物にもJAS有機マークが貼付されることになった。
有機栽培の生産基準は、害虫防除に関して、耕種的、生物的、物理的防除を適切に組み合わせて行うことが原則とされている。しかし、防除上やむを得ない場合に使用が許容される必要最小限の資材についても詳しく定められている。このうち、害虫防除技術としては、天然物由来の除虫菊剤、マシン油乳剤、各種の硫黄剤、天敵等生物農薬、性フェロモン剤などがこれに含まれている(表 有機栽培で使用可能な農薬の種類)。これらはほとんどがコーデックス委員会のガイドラインで使用可能とされているものである。これらが日本の農薬取締法に基づく農薬として登録されている場合には、農薬使用基準を守って使用することが必要である。
また、一般の食用農作物においては、2006年5月から農薬残留に関するポジティブリスト制が導入され、当該作物に残留基準のない農薬の残留基準は一律に0.01ppmと定められた。有機農産栽培においては、隣接する田畑からの農薬のドリフト(飛散)等による汚染がないように、農薬を使用する一般圃場と一定距離以上を保つことが定められている。しかし、万一、隣接圃場等からのドリフトによる農薬残留が基準値を超えれば、農薬取締法により一般農産物としての販売も禁じられることになる。